【私が癒えるまでの全記録】① 教育分析(精神分析療法)
自分を見つめ直したいと思って、大学で心理学を学んでいたとき。
「親への怒りがなくなると、心身の不調が回復する」という記述を読んで、気がつきました。
私の心身の不調は、母との関係が原因だったのか。
そして、「いつか、母への怒りをなくしたい。そのために、きちんとした心理療法を受けたい」、と願っていました。
今回は、私の「教育分析」の体験、そして、「教育分析」から得たものについて、お伝えします。
「教育分析」への準備と期待
「教育分析」とは。
将来、心理カウンセラーを目指す人が、自分自身も、心理カウンセリング(心理療法)を受けて、自分の課題を解決する、という教育プログラムです。
私は、大学院を修了して、念願の「教育分析(精神分析療法)」を受けました。
教育「分析」と、名前がついているぐらいだから、精神「分析」療法じゃないとダメでしょう、という考えで、「精神分析療法」で有名な先生のもとを訪れます。
今から思えば、かなり浅はかな考えですが…。
私は、母との関係に課題があり、かなりこじれたものがある、と思っていました。
もしかしたら、問題が大きすぎて、「教育分析」では、扱ってもらえないかもしれない、とも感じていました。
それで、初めて先生のところを訪れるとき、自分の生い立ちを詳細に書き記した書面を持っていきました。
先生は、書面に目を通し、何もおっしゃらなかったので、一次審査に通ったように、うれしく思いました。
先生からは、「頭に浮かんだことを正直に話すほど、自分が見えてくる」と言われました。
「精神分析療法」では、相談者(クライエント)が、頭に浮かんだことをそのままに話します(自由連想)。
そして、精神分析療法家(精神分析療法をおこなう人)が、どこに課題があるかなどを提示したり(直面化)、原因を教えてくれたりします(解釈)。
私は、一生懸命に話をしました。
頭に浮かんだことを話すと、「今日は暑い」とか、「お腹がすいた」などになってしまうので、「母に関して頭に浮かぶこと」を話しました。
先生は、たいてい、私の話を黙って聞いています。
1時間の最後に、先生の感想や、私の課題がどこにあるかなど、話してくれました。
「先生のもとへ通っていれば、自分の課題が解決する」
そんな期待を抱き、週1回、先生のもとへ、せっせと通い続けたのです。
「教育分析」は、2年で打ち切られた
ところが、教育分析が始まって、2年が経とうとしていた頃。
私が仕事でおこなっていた心理カウンセリングの様子を、先生に話したら…。
教育分析の先生から、私の対応がいたらない、ということを指摘されました。
その通りなのかもしれませんが、信頼していた先生に否定された気がして、私はとっても傷ついたのです。
それで、その翌週、「頭の中に浮かんだことを正直に話す」という先生の教えを実践します。
私は、「先生に言われたことで、ガッカリしました」と、涙ながらに訴えました。
かなりの勇気をふりしぼって伝え、話した後は、息をこらして、先生の反応を待ちました。
先生は、しばらく黙っていた後に、口を開きました。
「あなたは病理が深い。
悩みを相談するだけの人ならいいけれど、心理カウンセリングを仕事にしているから、治療が難しい。
治すのに、10年はかかる。
私は、年だから対応できない。
もう終わりにしましょう」。
その翌週が、最後の「教育分析」となりました。
見捨てられたような切なさ。
裏切られたようなショック。
でも、どこかで、「やっぱりそうか。しかたないよね」と、あきらめるような思いがありました。
「教育分析」を受けて、得たもの
教育分析の先生は、それから7~8年後に亡くなったので、先生の話はウソではありませんでした。
先生は、私のそれまでの話の流れから、いつ「教育分析」を打ちきるか、頃合いをみはからっていたのかもしれません。
悲しい思い出ではありますが、先生からいただいたものが、たくさんあります。
母に求めていた「温かさ」
私は、先生が、私の話に笑い、感想を言い、普通に会話をするように関わってくれる瞬間が、好きでした。
私は、温かい存在を求めていたのです。
心理カウンセラーとしてのスタンス
心理学の教科書に、「精神分析療法家の存在は、鏡のように相手の存在を映し出すものだから、反応をしてはいけない」と、書いてありました。
そのため、「精神分析療法家」、そして、「心理カウンセラー」というものは、リアクションをしてはいけない存在だと思っていたのです。
ところが、先生は、私の話に、表情豊かに、リアクションしてくださいました。
私自身、心理カウンセラーとして、クライエント(相談者)の話をうかがうとき、リアクション豊かに応答しています。
先生から、心理カウンセラーとしてスタンスを、教えていただいたのです。
自力で頑張る力
私は、つらい時に、だれかに頼りたくなるクセがあります。
だれかに寄りかかって、その人に助けてほしい、と思ってしまうのです。
他力本願ですね。
でも、先生との「教育分析」が終わった後。
私は、できるだけ自力で、自分を知るための道をたどり、今、ここにいます。
先生は、「人に頼らず、自分で道を切り開きなさい」と、私に教えてくれたのです。
ネガティブな体験をした時は、それと同じだけ、ポジティブな体験も手にしています。
人生プラスマイナスゼロです。
続きはこちら。教育分析の次は、集中内観にトライします。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。