「発達凸凹(発達障害)」のために、仕事でミスを起こしがちな人の対策法
「学生時代は、特に問題がなかったのに、働くようになってから、仕事でミスを繰り返すようになった」。
成人になってから、「発達障害」の診断がついた人に、よくあるエピソードです。
私自身も、学生時代、民間企業で働いているときは、特にトラブルなどありませんでした。
それなのに、心理カウンセリングの業界で働くようになってからは、いじめ(嫌がらせ)にあったり、「仕事のできない心理カウンセラー」と評価されたり…。
原因を探るうちに、私にも「発達凸凹」があることに、気がつきました。
おそらく、病院へいっても、診断がつかないレベルです。
※「発達凸凹」は、生まれつき得意なことと苦手なことの差が大きい特徴のことを言います。発達凸凹に加えて、ストレスなどから生活に支障が出た状態を、「発達障害」と診断します。
私自身、「発達凸凹」があることを受け入れ、工夫を重ねることで、仕事上のミスは、最小限に防げるようになってきました。
私の体験を通して、「発達凸凹」がある人が、自分の特徴を自覚することのメリット、仕事上のミスを減らす工夫について、お伝えします。
※「発達障害」についての記事→『自分や周りの人を理解し、悩みを解決するために、「発達障害」の知識は役に立つ』
「発達凸凹(発達障害)」を自覚するメリット
自分に「発達凸凹」があること、そして、その特徴を自覚する、最大のメリットは、効果的な対策を打てることです。
ちなみに、私が仕事上でやりがちなミス、そして、苦手なことは、次の通り。
- 良かれと思って、口にした言葉が、相手を不快な気持ちにさせてしまう。
- 関わっている人たちの意見が異なると、判断を誤ってしまう。
「自閉スペクトラム症」に近い特徴をもっているのではないかと思っていたのですが、診断基準には、当てはまりません。
私は、たいていの場合、相手の気持ちを察することができるし、その場の状況を把握することができるからです。
ですが、「隠れ発達障害という才能を活かす逆転の成功法則」(2018)吉濱ツトム 徳間書店、という本を読んで、謎が解けます。
その本には、「軽度のアスペルガー(今でいうところの「自閉スペクトラム症」)の特徴をもつ人、特に女性は、相手の気持ちを細やかに感じとることができ、その場の状況を把握することもできる。しかし、ときどき、その場の空気を読みあやまることがある」と、書かれていました。
なるほど、ドンピシャです。
自分の特徴を把握したので、次に、対策を考えていきます。
仕事上のミスを減らすための工夫
まず、「仕事でうまくいっているとき」について振り返り、傾向をさぐります。
「仕事で失敗したとき」のことばかり考えてしまいますが、「仕事でうまくいっているとき」にこそ、「問題を解決するためのヒント」が隠れているのです。
私の場合。
- たっぷり睡眠をとって、頭がさえている。
- 相手の利益を、一番に考えている。
- 「何とかなるさ」と思っている。
「仕事がうまくいっているとき」のパターンを見つけてから、「仕事でミスをするとき」のパターンを探します。
- 相手に言われたことを、真に受け、反射的に判断したり、返答したりする。
- ミスをすると、「失敗してはいけない!」と、自分に意識が向き、相手のことがおろそかになる(肩に変な力が入っている)。
- ミスをすると、自分を責めてしまい、「失敗してはいけない!」という思いが、ますます強くなる。
そして、考えた対策が、以下の通り。
- 日頃から、睡眠をしっかりとる。
- マインドフルネス、呼吸法を日常的に取り入れ、身体と心をゆるめる時間をもつ。
- 苦手なことについて、職場の人に伝え、サポートしてもらう(協力的な人、限定だけど…)。
- 失敗をしても、自分を責めず、改善点について考える。
- 自分を責めるメカニズムについて解明し、解きほぐしていく。
「発達の凸凹」がある場合、どうしても、苦手なことがあります。
つまり、特定の分野に関して、限られた能力しか、活かせないのです。
そのことを自覚し、「限られた能力を、最大限にいかすための対策」を整えていく。
すると、失敗がなくなる訳ではありませんが、失敗が減っています。
「発達凸凹」がある人が、してはいけないこと
「発達凸凹」がある人が、仕事をする際に、してはいけないことは、次の2つです。
①自分に合わない職場で働く
②「発達の偏り(発達障害)」を印籠がわりに使う
自分に合わない職場で働く
私の場合、心理カウンセリング業界で働くようになってから、仕事上のミスを、周りから厳しく指摘されるようになりました。
おそらく、学生や民間企業に比べ、専門家として、繊細な判断を求められるからでしょう。
ところが、そんな私でも、長年、のびのびと働けている職場があるのです。
ひと言でいえば、「居心地がいい」職場です。
- 私の仕事ぶりを、いちいち批判されない。
- 私のやり方を、おおらかに見守ってくれる。
- 私の得意なところ、頑張っているところを、認めてくれる。
- 私の苦手なところを知っても、サポートしてくれる。
- ミスをしても、大目に見てくれる。
こういう職場で働くと、「何とかなるさ」という考えがわきやすく、私らしく、いきいきと仕事ができます。
その分、ミスも減少します。
「発達の偏り(発達障害)」があるために、トラブルが起きるかどうかは、実は、「環境」の要因が大きいのです。
自分に合った「環境」、つまり、自分に合った職場を見つけることは、簡単なことではないかもしれません。
でも、自分に合わない「環境」を体験することで、自分に合った「環境」を見つけることに、近づいていきます。
「発達の凸凹」を印籠がわりに使う
時代劇で、黄門さま(水戸黄門)が、最後に出して、人々を従わせるものが、「印籠」です。
黄門さまの印籠と同じように、「発達の偏り(発達障害)」があることを振りかざして、「苦手なことはやりません!」と押しきることには、リスクがともないます。
- 周りの人から、「給料泥棒」と、非難の目を向けられる。
- 苦手なことを頑張っている人から、「あなたばっかり、ずるい」と、ねたまれる。
結局、職場の人たちから、信用を失います。
職場の雰囲気が悪くなると、働きづらくなり、仕事上のミスも増えます。
そのため、「発達の偏り(発達障害)」があることをカミングアウトする場合、「自分の得意なことを活かして、職場の人にメリットをもたらすこと」を、最優先に考えます。
そして、その後に、苦手なことを伝えて、職場の人にサポートしてもらうのです。
私の場合、スクールカウンセラーをしている職場では、先生方が対応に手こずる方たちのお話を伺うことを、私の得意分野とお伝えしています。
得意というよりは、たいていの方が、私の母や夫に似ているので、なじみがあるのです。
すると、職場の人たちから感謝され、私の苦手なことをサポートしてもらえたり、大目に見えてもらえたりします。
「ギブアンドテイク」、「ウィンウィンの関係」は、職場では大切なのです。
「発達凸凹」があることを自覚し、対策を打っていくと、仕事上のミスが減っていきます。
「発達凸凹」というと、苦手な面ばかりがクローズアップされがちですが、得意な面もあります。
得意をいかして、苦手をカバーしながら、自分に合った「環境」で働く。
自分に合った「環境」は、探すこともできますし、自分の努力で作っていくこともできるかもしれません。